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「可愛いあなた」 野口健司夢

 三人ほど……若い男性がいるとは思っていた。明るく元気な近藤派の藤堂平助と芹沢派の野口健司。この二人はなかなか仲が良いようだった。もう一人斎藤一、と言うのがいたけれど、その人は何を考えているのか分からない、寡黙な人だった。
 私は、藤堂さんほど明るくなく、斎藤さんより寡黙ではない野口さんとよく話していた。

 聞けば野口さんは私と同い年のようで、彼はいつも私の事をゆり、と名前で呼んできた。私は健司さんと呼んでいた。ただ、仲が良かった。

「健司さん。どうしました?」
「芹沢先生がまた酒飲んでるんだよ」

 俺は、逃げてきたの、と健司さんが笑う。よく逃げられた、と思う。でも、たまに健司さんの体に痣があって、これが芹沢さんが酔っぱらって暴れた、と言う証拠に見えた。以前、その痣は何と聞いたとき、剣の稽古をしていて、と言って笑っていたけれどそれにしてはおかしいぐらいに痣が多かった。私は、健司さんをはっきりと見た。

「芹沢先生って酔っぱらうと大変なんでしょう?」
「そうなんだよ。芹沢先生にはお酒を控えて貰いたいぐらいだな」
「お酒がない世界があるなら連れて行きたいですか?」
「当然だろ」

 素直な人なんだな、っておもった。風に当たりながら私たちは歩いた。隣を歩く健司さんの横顔を見ると、何か言いたげな目をしていたけれど気がつかない振りをした。ただ、気丈に従っている健司さんはすごいな、と思った。私だったら、絶対芹沢先生について行かないよ、と言ったら、神道無念流で一緒だったからね、と言った。
「浪士組に加入して良かったと思ってますか?」
「うん。京は何もかもが新鮮だよ。ゆりにも会えたし」
 さらりと私に会えた事が良かったと言ってくれた気がして嬉しかった。それでいて健司さんは照れてるそぶりもなければ、下心もなさそうだった。本当にまっすぐなんだろうな。私たちはただ、歩いた。
 目的なんて何もなかった。ただ、今だけは屯所に戻りたくない、と言う気持ちが重なっただけだったんだと思う。
「それにここは……壬生村は静かだ」
「そうですね」
「こう……静かなところにいると心が洗われる気がするんだよ」
 健司さんからそんな言葉が出てくると思わなくてふと驚いて彼を見ると、何食わぬ顔をしている物だから、結局その言葉にうなずいてしまうしかなかった。どうやって育ったら健司さんみたいにまっすぐな人になれたんだろう。私とは全然違うみたい。何というか……流れている血が異なるって言ったら良いのかな。
 後、水戸学とかを学んでいるはずなのに、尊攘派に汚されていないんだよね。過激じゃないって言うか。そう言うところもどこか違う気がするの。私だったらきっと、汚されていたと思う。どうして、こう素直なの?

「健司さん、その……この近くにおいしいぜんざい屋があるんです。良かったら行きませんか?」
「そうなの? なら行こうか」

 健司さんと並んで歩いた。彼がそっと私の手を握る。若い男の人とこういう関係になったのは初めてだった。見詰める事すら出来ない。こっそり彼の顔を見ると彼の頬も赤くなっていて、あぁ、照れてくれてるんだなぁと思った。

「ここです」
「こんなところにあったんだ。前通ったのに気がつかなかったなぁ……」
「ふふっ。あ、ぜんざい二つお願いします」

 ここで頼んだのは私。私たちは向かい合って座った。懇ろな間柄なのか、と聞かれて二人で必死に否定したら笑われたりした。こんな平和な時間がいつまでも続けばいいのに、と思っていたけれど、それは、続かなかった。


 芹沢鴨、平山五郎の暗殺――

 健司さんは屯所にいなくて難を逃れた。一般的には長州藩の仕業、と言う事になったけれど、私たちは二人とも近藤一派がやったと信じていた。二人で葬儀に参列した。ひそひそと近藤先生は演技派だ、なんて言っていたけれど、周りには聞こえていないようだった。

「でも、平間さんは?」
「逃げたのではないでしょうか。どちらにしろここにいる芹沢派は健司さん一人ですね」

 そういうと健司さんはなんだか切なそうな顔をして私を見てきた。


 ――貴方でさえも殺されてしまうのでしょうか。

 いいえ、僕は殺されません――。

 ――どうして分かるのですか。

 どうしてか、見えるのです――。

 ――なら最後の一人となるまでどうか。

 君も――

 ――貴方も

 ――生きてください――
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「学のある女、だけですか」 伊東甲子太郎夢

 私は、伊東先生の小姓となりました。その後、御陵衛士に入っても私は、小姓となりました。彼の考えは本当に素晴らしくて、私は伊東先生と共に来て良かったとずっと思っております。ただ、彼の押しが弱いところといえば、彼は過激派ではなかったのです。この乱世の中、過激派でない者は残っていく事が出来ないと私は常々いっておりました。でも、彼はいうのです。弁があれば人の心は動くと。
 要するに丸め込もうという事だったのだと思います。言いくるめてしまえば、こちらの物です。でも、皆自分の考えが正しいと戦っている中、相手を言いくるめようとするのはやはり時代遅れかと存じます。

 伊東先生は、水戸学を学び三代道場といわれた北辰一刀流に入門し、剣術を学びました。今日はそんな伊東先生の話をしたいと思います。

 御陵衛士に入って数日たったある日、私は伊東先生に呼び出されました。なぜ呼び出されたのか分からない私は、少し考えながらも伊東先生の自室へと向かいます。

「失礼します」

 そっと戸を開くと悠然と伊東先生は座っていました。今でもあのときの伊東先生は大変お美しかったと覚えております。流れる髪もシミ一つない肌もすべてが陽と合わさって独特の雰囲気を表していたのです。それはまるで幼き頃に読んだ光源氏の君を思わせるほどでした。

「君は随分学があるようだね」
「ありがとうございます。伊東先生の為、今後も精進致します」

 そういうと伊東先生は優しく微笑んでくださいました。その時の彼の表情は今でも忘れられません。その後、伊東先生が、お酌を、と言うので、しゃくをしながらたくさんのことを話し、二人の時間は過ぎていきます。とても雅やかな時間だったと思います。私は、彼の姿一つ一つを忘れないように見ていきました。
 ふと、伊東先生が私の肩に寄りかかってきました。私は、とても幸せな気持ちでいっぱいになりました。貴方の重みがとても嬉しかったのです。でも、きっと私の顔は赤く染まっていたのでしょう。伊東先生が何も言わなかったのが唯一の幸せでした。

「都、お前はもっと学を磨け。私の小姓にしておくにはもったいないようだ」

 伊東先生にそう言われて私はやっと彼に認められた、と思いました。彼に認められる事がこんなに嬉しいなんて、私は全く思っていませんでした。彼は私を女だから、と下に見ているのだろうと思っていました。でも、男だ女だ言わないで貴方が私を認めてくださった、そのことだけで、私は貴方を評価したのです。

 私は伊東先生に勧められたたくさんの本を読みました。薩摩藩や長州藩の中心人物とも政の話をしました。中には女だとバカにした人もいましたが、そんな事は私にはもう見えていなかったのです。いつしか薩摩藩、長州藩と言った主要藩に、伊東先生だけでなく、私の名前も広がっていきました。

「お前はすごい女だ。女として生まれなければ優秀な政治家になっていただろう」
「そんな事は有りません。伊東先生がいたからこそ、私は学ぶ事ができました。伊東先生がいなければ私は、学を身につけようとも思わなかったと思います。伊東先生には本当に感謝しても仕切れません」

 そういうと、伊東先生は私に微笑んでくれました。私はいつしか伊東先生に愛されたいと思ってしまいました。

 ――伊東先生は、私を学のある人間としか見てくれないのですか?

「伊東先生、今日は時間大丈夫ですか?」

 ある日の夜、私から伊東先生をお誘いしてみました。伊東先生は、大丈夫だと言って私の部屋に来ました。その時お酌をしていたのは、藤堂さんと篠原さんだったと思います。御陵衛士の五本指に入る学の持ち主が集まっていたのです。そうなれば始まるのは政の話が中心でした。また、外国の話もしました。外国では男女が共にご飯を食べると聞いたときは驚きました。それを伝えて伊東先生は言うのです、お前もこれから共に食べろ、と。

 私は、伊東先生の小姓でしたので、いつもは伊東先生の後ろに控えている立場でした。でも、一緒に食事をさせてくれるとの事で、私は舞い上がって舞い上がって仕方がなかったと思います。

「嬉しいです。伊東先生と食事をこれからしてよろしいなんて!」
「そんなに喜ぶほどのことか?」

「だって……」
 伊東先生の事が好きだから、と言おうとして私は口を閉じました。閉じた、と言うより言えなかった、の方が正しかったかもしれません。口が開きそうだったのに閉じたのです。

「だって? なんだ?」
 伊東先生はそう私に問いかけてきます。私が金魚のように口を開閉していると、いつの間にか私は彼の腕の中にいました。恥ずかしくて恥ずかしくて仕方がなかったです。もっと美しい姿の時に抱きしめられたかったと思ってしまいました。

「伊東先生? 急にどうしたんですか?」
「御陵衛士がなくなっても、お前は俺の隣にいてくれ」

 頭が真っ白になりました。彼にそんな事をいわれるとは思っていませんでした。私は、小さくはい、と言いました。

 ――これからは、学だけではなく貴方に愛される術も学びたい、と思いました。


 貴方を愛した事は、きっと何にも変わらない宝物です――。

「あの日の夜のこと」桂小五郎夢

「行ってらっしゃいませ」

 私は、桂先生を家から送り出した。彼が向かった場所は池田屋。私は、治安の悪い京で、桂先生が狙われている事もうすうす気がついていたため、そっと彼の後ろをついて行った。

 数刻して、桂先生は池田屋についた。だが、彼は直ぐに池田屋から出てくると何か呟いて私がいる方に戻ってきた。私が急いで身を隠すと、彼は対馬藩邸へと入っていった。

 もしかして今日ではなかったのかと私は思った。きっと桂先生もそう思ったんだと思う。だから戻って対馬藩邸に行ったんだろうな。
 その後暫くして吉田稔麿や宮部鼎蔵と言った人たちが続々と池田屋へと入っていった。私は桂先生を呼びに行こうかと思ったけれど、桂先生は私が自宅にいると思っているため、呼びに行かなかった。私は、やっぱり今日だったんだ、と思いながら池田屋を見つめる。
 いやしかし、賊軍長州藩らが池田屋に集まっているというのに、周りは静かすぎた。本来なら京都守護職や会津藩、薩摩藩等八月一八日の政変で長州を追い出した藩が来てもおかしくないというのに。

 暫くの時間池田屋を見詰めると、私は男の声を聞いた。

「会津中将殿お預かり、新選組。ご用改めでござる!」

 新選組が、ご用改め……。しかも入っていったのは池田屋!? 桂先生を呼び戻さなくて良かったかもしれない、と私は思った。私は、池田屋に向かった志士達や新選組に見つからないように隠れた。
 異変に気がついた桂先生が外に出て来たらしい。池田屋方面へと行った。だが、そこを大島さんと言ったか、に止められてまた戻っていった。正直、良かった、と思った。桂先生ほどの人の人が殺されてはいけないと思う。それに、私はやっぱり桂先生が大切なんだと思う。大切ではなかったら、後ろからついて行くなんてことは出来ないだろうな。

 私は家へと戻っていった。

 桂先生は次の日に戻ってきた。桂先生は、池田屋で事件が起きた事を話してくれた。

「そうだったんですか。もし行っていたら貴方も……」
「そう言う事だ。でも、私は戻ってきた」

 うん。桂先生は戻ってきたんだ。何より嬉しいのはそれだった。でも、桂先生は長州藩藩士……。狙われているだろうに、大丈夫なのかな。

「不安……なのか」
「当たり前です! だから、私が桂先生を守りますっ!」
「お前にそんな事をいわれるとはね、由起」
 そう言って桂先生は笑い出す。

「大丈夫だ。私は死なない」

 そう言って私の頭を軽くたたいてくれて、私はとても嬉しくなった。

 そんな桂先生が好きになったのです――。

「函館での暮らし」 土方歳三夢

 私は、土方さんと函館へ向かった。五稜郭というお城は、どこか不思議な形をしていて、私が今まで見てきたどんな城とも違っていた。私は、土方さん達旧幕府軍の考えに同意して、
 戦うために――。
「土方さん、今日は仕事が少ないのですね」
「あぁ、いつもよりは少ない、な」
「函館の街は雪があって本当に綺麗です。ここの住民は極寒の中生活していて……。本当に強いですね」

 本当に、すごいと思う。私は、寒さにそこまで耐性がないため、こんなところで生活をしていたら直ぐに風邪を引いてしまいそうだ、と思った。土方さんが私に微笑みかける。疲れているにもかかわらず、私のことを見る土方さんは本当に嬉しかった。
 土方さんと一緒にいられたから、私はここに来られたんだと思う。女の私も戦力として考えてくれていた。それだけでも本当に嬉しかったのに、今こうして彼と同じ部屋で過ごせている。

「そういえば、今度札で幹部を決めるらしいな」
「そうですね。貴方は、きっと選ばれるでしょうね。私は……無理でしょうけど」

 きっと土方さんは、この函館を治めていく上の立場へとあがっていく人間なのだろう。私は、そんな彼を支えたい。


 そして、選挙の日――。

 土方さんは大鳥圭介さんの下につく事になった。陸軍奉行並――。立場としては新選組の副長みたいな物だと言っていて、私は素直におめでとうございます、と言った。だが、それと同じくらいに、土方さんが離れていきそう……という不安もあった。
 土方さん付きの小姓にはすでに市村鉄之介という私より五つほど下の男の子がいた。主に土方さんに仕事を任せられるのは彼で、お茶一つも彼がいつも入れていた。そんな子が近くにいる、だから、私は土方さんと一緒にいる事なんて出来ないんだ。
 でも、土方さんはたまに私を部屋に呼んでくれた。それは日数が連続した時もあったし、日数があく事もあった。でも、そのときだけは、土方さんは私を必要してくれて嬉しかった。

「土方さん。ありがとうございます。でも疲れてるのではないですか?」
「でも、俺はお前といたいんだ。きっとどこかでお前のような存在を求めていたのだろう。いずみ」
「土方さんっ!」
 私は、土方さんをしっかりと見つめた。潤んだ目で見つめると私の唇に暖かい物が触れた。それが土方さんの唇だと気がつくまでに時間が空いてしまった私はなんとバカだったのだろう。

「もう、これ以上戦うな」
「でも!」
「まだ俺の周りには戦える人間がいくらでもいる。お前一人いなくても、俺は大丈夫だ、心配するな。いつか、お前を迎えに行くから待ってろ」
「はい」

「行ってしまわれないで、好きだから」 原田左之助夢

 私は左之助さんと共にいた。いつも明るい左之助さんが、どうしてだか少し表情が暗くて、気になった。

 左之助さんの部屋に入った。聞いて欲しい事がある、と言う彼はいつもより真剣そうで、逃げたくて逃げたくて仕方がなくなった。でも、逃げてしまえば、真実を見る事は出来ないと私はここにいた。
 いつだって新選組として、辛すぎる真実を見続けてきた私だ。平気だ、と思う振りしかできなかった。

「話とは、話とは何ですか? 左之助さん!」
「俺は、新選組を抜けようと思っている」

 加入当時からの仲間である、左之助さんが新選組を抜ける――。

 どうして、近藤さんや土方さんと袂を分かつ事になったのだろう。元々仲が良くなかったのは知っているけれど、それでも二人の考えに同調したから、利用し利用されてきたんでしょう? いつから考えていたのだろう。幕臣として取り立てられた新選組だからこそ嫌になったのかな。それとも新選組が多くなったから? 局中法度が厳しすぎるから? 私は、どうして、という4文字がどうにも出なかった。私が口を開こうとしている間に、左之助さんが口を開いた。

「新八も一緒に抜ける事になっている」

 永倉さんも? でも、そう言えば永倉さんと左之助さんって……。会津藩主松平容保に非行五ヶ条を提出したんじゃ……。じゃああの頃からすでに離隊を考えていたという事? でも、それなら伊東さんと一緒に抜ける事もできたのでは?

 あぁ! どうして私は彼を理解できないの???

「左之助さん……」

 喉がカラカラで、声がかすれた。言葉を紡ごうにしても全く出来ない。前にいる左之助さんを見つめる事もできない。左之助さん……。私は……。

「お前は、ここに残れ。俺は新八と共に会津へ向かう」

 左之助さんはどうして私を連れて行けないの? 戦える私を連れて行けない理由が全く分からない。私は、男として育てられて……。戦える人はいくらいても足りないのではないの?

「どうして……連れて行けないの?」
「お前が大切だからだ。近く置いておきたくない。だから、新選組で戦え。いつかまた再会しよう」

 すでに十分過ぎるほど巻き込まれているのにどうして。戦いに身を置きたいのなら、貴方について行くしかないでしょう? こんなにも貴方が好きなのに。貴方を守りたいのに。

 そうして、次の日――。

 二人は出て行った。 私は見送りには行かなかった。行ってしまったらきっと、縋り付いて左之助さんの道を邪魔してしまう。でも、貴方が新選組で戦え、いつか再会しようと行ったから頑張ろうと思えた。


 そして、数日がたったある日――。

「土方さん、私はどうしたら?」
「俺についてこい。旧幕府軍に合流して戦う」
「はい、分かりました」
「原田を守るためにも俺と共に戦うのが一番良い。戦いを早く終わらせる事こそが一番大事だ」


 原田さん、原田さん愛しています。

 貴方がどこに行っても、貴方にいつか再開できると信じています――。

「貴方を教えて」 中岡慎太郎夢

「薩摩と長州が同盟を結ぶ? それってどういう事です?」
「薩摩も長州も倒幕派だ。だから同盟を結ぶ事によって幕府やその手先の会津を追い出す」
「でも薩摩は元々公武合体派じゃないんですか?」

 薩摩藩は会津と行動を共にしていた。八月一八日の政変では、会津と共に長州を京の街から追い払ったはず。その頃はまだ、公武合体派、だよね? その後の禁門の変だって、薩摩藩は会津藩と共に長州を押さえているはず……。なのにどうして、薩摩と長州が手を結ぶ?

「それが、長州が挙兵した高杉晋作らによって考えを考えたらしい。それに幕府はいつになっても攘夷を行おうとはしない。所詮幕府にはそれほどの力はないって事だ。薩摩も幕府の弱体化に気がついて倒幕へと傾いて行っているらしい。そこで手を結べば……」
「幕府がなくなって新しい世が出来るという事ですか?」

 中岡さんはすごいと思う。その後、薩摩と長州の距離が近づいていくように、坂本さんと共に東奔西走していた。頭がいい人、とはこういう人を言うんだと思う。尊皇攘夷と言う考えや倒幕という考えがどう、と言えるほどの頭は持っていないけれど、彼は本当にすごいと思うんだ。

 その後結ばれた同盟の内容は以下のような物だった。

 1.幕府と長州が戦争になったら、薩摩は直ちに2000人の兵を上京させ、在京の兵に合流。大坂にも一〇〇〇名を配置し、京都と大坂を固める。

 1.長州が戦局優勢になったら、薩摩は朝廷に対して、長州への朝敵の指定撤回の為に尽力する。

 1.万が一、長州が戦争で負けても1年や半年で藩は壊滅しないので、薩摩には必ず尽力して欲しい

 1.幕府と長州の戦争で、幕府軍が勝負なく江戸に戻っても、朝敵指定という冤罪を晴らすために尽力して欲しい

 1.幕府が兵力を増強し、会津・桑名藩なども強靱な指定をとり続けるときは、薩長2藩で幕府と戦う

 1.長州の冤罪が晴れれば、薩長双方とも、誠心をもって一体化し、皇国の権威回復の為に尽力する。

 これが結ばれたのが慶応2年1月の事だった。そして翌月、第二次長州征伐――。

「これで長州藩が勝つなんて、幕府は思ってなかったでしょうね」

 驚いた幕臣達の顔が目に浮かんだ。私たちのお酒のペースはどんどん速くなっていった。そして、今後はどうなるか、と言う話に私たちは移っていった。
 私はきっと今後は朝廷や薩摩長州と言った藩の人たちが中心となる世が出来るだろうと言った。時期に開国もし、外国との取引も進むと思う。

「攘夷なんて考え方、もう古いな」
「そうですよ。それに幕府軍だって攘夷とか言いつつ銃の一つぐらいは持ってるのでは?」

 銃を持っていて攘夷なんて言う考えはおかしい、と思ったけれど、外国人を見た事がないのかもしれないな。私たちは笑っていた。重なる唇も、つながり合う確かな思いも、この頃は消えないと思っていた――。


慶応3年11月……。

 坂本龍馬、中岡慎太郎両者が暗殺。

 犯人は京都見廻り組とか薩長とか新選組とか色々な噂が有った。中岡さんは女性だからとバカにしないで私に政の話をしてくれて、大切にしてくれていたのに。

 涙を拭っても拭っても止まりきらなかった。


 ただ一つ悔やむのならば、貴方に女として見られていなかった気がしただけでした……。


 そして、もう一つ言うならば、貴方に新政府を見せてあげたかったのです――



 中岡さん、貴方の望んでいた世は、もうそこまで迫っていました。

「出来るなら貴方に」 芹沢鴨夢 続編

「できるならあなたに」 芹沢鴨夢 続編


「芹沢さん……」

 私は、いつも頓所を眺めていた。一度だけ芹沢先生が連れて来られた。

 その日以降、私は毎日行った。いつもは追い返されるけれど、今回は追い返されなかった。


「いつまでここにいる気なの?」
「あなたは……」
「私の事はどうでもいいでしょ。芹沢先生は会いたがっていない。帰りなよ」
「でも、私は芹沢さんに会いたいんです」

 私はそう言って屯所を見つめる。芹沢さんは今日屯所にいるのだろうか。それともどこか別のところに行っているのだろうか。それすら分からなかった。

「野口……とお前はこの前の。入れ」

 私は芹沢さんに入れ、と言われて入った。野口さんの嘘つき。芹沢さんは私に入れと言ってくれた。芹沢さんは今、何を考えているの? 教えて?


 芹沢さんはまたお茶とお団子を出す。そしてまた口移しをしてくる。そして、口移しで私が食べさせる。甘い物が苦手だと良いながら、私が口移しすると食べてくれる芹沢さんが愛おしい。

 口を合わせながらゆっくりと体に触れていく。私の体は、触れられるたびに熱くなった。体中がほてるように熱い。そして、何度も私に口づけを落としていく。ねぇ、芹沢さんも私に会えなくて少しは寂しいって思ってくれた?

 私たちは、寂しさを埋めるかのように何度も求め合った。そうして、お酒を口に運ぶ。そうするとまた芹沢さんは怖い彼に戻ってしまう。

 寂しいよ――

 一度だけで良い、素面の貴方と一夜を共にしたいのです。


そして、時は流れた。

私と芹沢さんはその後会う事はなかった。


「芹沢が?」
「なんでも、長州の人間にやられたとか。私は、中で何かあった気がするんですけどね」

 芹沢さんが、殺されたってこと!?


 どうして?

 あんなに強い人なのに。


 壬生浪士組の中でも屈指の軍才だったと言われていたのに。



 好きだよ、芹沢さん。


 貴方に会えて良かった。


 貴方の優しいところを知っていたのはきっと私だけ。





 

 その日食べた団子の味は、涙の味しかしなかった。

「出来るなら貴方に」 芹沢鴨ゆめ

「ふぐあ!」
「きゃっ」

 それは一瞬だった。私が顔を上げると不機嫌そうな大男が一人。みぶろの芹沢と言っただろうか。出来れば近寄りたくなかった人の一人。私は、謝罪の言葉を直ぐにその場を後にしようとした。だが、伝えられた言葉に私は……。

「今日一日、俺につきあえ。俺は壬生浪士組局長、芹沢鴨だ」

 有無を言わさず表情と声に、私はついて行く事しかできなかった。

「おい、とっととついてこい」
「は、はい……」

 私は、怖かったけれど芹沢さんの後をついて、歩いて行った。話してみると、壬生の人たちが話している物とは違って、私は正直驚いた。芹沢鴨と言えば、過激派で人を斬りまくる、押し入りをした、いつも酒に酔っている、などという噂が横行していた。その噂と目の前の彼はあまりにも異なりすぎていました。

「ここは?」
「見れば分からぬのか? 団子屋だ」

 どうして芹沢さんは私を団子屋に連れてきたのだろう。当然私は芹沢さんの自宅に連れられるのだろうと思っていた。芹沢さんが団子を買っていた。二本買っていたらしい。包みから見える二本の団子は彼と私の物だろうか?
 芹沢さんの少し後ろを歩く私。幾分か歩いた後についたのが、彼らの屯所と呼ばれるところだった。

「入れ」
「失礼します」

 正直、ここに来て良い人ではないという事は一目で分かった。辺りを見回しても男の気しかない。そとから聞こえてくるのは鍛錬の声。正直、猛々しい、暑苦しくてここから離れたい、と思った。だけど、芹沢さんにここにいろ、と言われたら動く事はできなかった。どれだけ私は芹沢さんの言う事を聞けば気が済むのだろう。どれだけ芹沢さんと共にいたら彼は気が済むのだろうか――。

「待たせたな」
「芹沢さん?」
「茶を入れてこい」

 お茶、と言われても、私はここの勝手など知らない。どこに行けばお茶があるのかすら私には全く分からない。

「あの……」
「おい、新見。茶を入れてこい。二人分だ」

 声一つ掛けられない私に芹沢さんが助太刀してくれた、というよりは芹沢さんがとっととお茶を飲みたいから呼んだ、と考えるのが正しそうだった。でも、あの芹沢さんがお茶を入れろと言うところが、想像していたところと違って私は少し笑ったのだった。

 その後私たちはお茶を飲みながら話した。団子は食べなかった。

 芹沢さんが私の顔にそっと触れる。私は彼を見つめた。そして、彼の手にそっと触れる。芹沢さんの左手が団子を取った。そして、一番上の串の一つを口に含む。そして、そっと私に口つけた。

「ふあっ……」

 芹沢さんの舌が私の口を開いて進入してくる。それと同時に私の口に団子を入れてきた。

 まさかの口移しに、私の考えは止まってしまった。

 そっと押し倒してくる彼は本当に優しくて、みぶろと恐れられている人とは思えなかった。


 情事の後、私たちはお酒を飲んだ。と言っても主に飲んでいたのは芹沢さんで。よった芹沢さんは本当に怖くて、口より先に手が出るような人だった。私は殴られる事こそはされなかったけれど、でも、先ほどまでの優しい芹沢さんとは違って体が震えてしまった。

「芹沢さん……」


 どちらが本当の芹沢さんなのですか?


 かなうのならもう一度。


 あのときの貴方に抱かれたい。



芹沢鴨・・・・?

いいえ違います。
カモ・セリザワです。

甘すぎる・・・

「特等席はあなたの隣でした」 松平容保夢

「特等席はあなたの隣でした」

 きっかけは偶然だった。私が住んでいる壬生の村で大相撲が行われると聞いて私は言った。せっかく自分の村に興行で来るのだから、行かないのは損でしょ。

 私がとった席は一番前の席。一人で来たため見知った顔はちらほらとあっても友人はいなかった。私の隣の席には落ち着いた大人の男性。どこかで見たことがあるような気がしたけれど、この時にはまだ分からなかった。

――まさか自分の隣の席にあんな方が座っているなんて思わなかったんだ。

「しかし、随分盛り上がっていますね」
「大相撲の巡業は大変ですから、なかなか来られないのでしょう」
「そうですよね。場所も必要ですし、お金もかかります……って、貴方は……」
 言わないでください、というように手で口をふさがれた。
「今日は身分を隠してきているのです」
 声を聞いてわかった。この方は京都守護職の松平容保様である、と。私は何という方と話してしまったのだろう、無礼な行いはしていなかっただろうかと焦っていた。
 そんな私に気が付いたのだろう、松平様は大丈夫、気にしていない、と言った。

「でも……」
「今日は楽しむ。だからお前も楽しめ」
 そういって頭を撫でてくれた。大相撲はそこまで好きというわけではなかったけれど、隣にあなたがいたから楽しめたのです――。

「ん? 何も買っていないではないか」
「その……券を買うだけでいっぱいで……」
 そういうと、松平様は私に団扇を買ってくれた。こんな安いものでこんなに喜ばなくても、といわれたけれど、私は松平様から頂いたものだから嬉しかったのです。

「こちらにおられましたか」
「近藤ではないか。今回の興業、楽しませてもらったぞ」
「恐縮です。そちらのおなごは?」
「私は、桜と申します」
 目の前にいるのは、みぶろの近藤、だっけ。みぶろみぶろ恐れられている人には見えなかった。私は、松平様に呼ばれて、ついて行った。
 ここの団子がうまい、と言っている松平様を知っているのはきっと私しかいないと思う。


――もうきっと二度と会えない人だけれど、貴方が愛おしい。


誰得ですか。
いやきっとだれも得しません。

「貴方が残してくれたもの」 伊東甲子太郎夢

 私が彼と出会ったのは、まだ桜が散る前のこと。容姿端麗で学のあるあなたから目が離せなくなって行ったのでした……。

 伊東先生は、さまざまな話をすることができ、大変弁が立つ方でした。私は話が下手で、新選組の中でも無口で通っていました。私は伊東先生の小姓だったのもあって、いつも伊東先生の話を聞きに行っていました。

 ある日の事でした。伊東先生が私を呼び出しました。都、と呼ぶ声だけが私の中にはいつまでも残っていました。

「少し遅れてしまって申し訳ございません。伊東先生」
「都。先生と呼ぶのはやめよとあれほど言ったのに、まだそう呼ぶのですか。あなたにとって私は先生ではないはずですが?」
「でも……伊東せんせ……いや、伊東さんは私にいろいろなことを教えてくれます……」
「また、先生と言いそうになりましたね。まあ貴女は私の小姓ですし、貴女が馴れないのであれば、先生、でも良いとしますか」
 伊東先生は、なんなのだろう。優しいのか、甘いのかがさっぱり分からない方でした。でも、私が話しかけてくれると喜んでくれているだろうとは思いました。

 伊東先生は、今後の日の本の国がどうなるかという話を良く私にしてくれました。伊東先生は近いうちに大きな戦が起きるだろうと言っていて、その戦を止めたいと言っていました。私に戦いを見せたくない、と言っていた伊東先生の表情は忘れられません。
 
 それから1年ほどの時がたった――
「御陵衛士、とはなんなのですか?」
「公明天皇の墓を守る仕事だ。都、参加するだろう?」
 私は、はい、と言う事しかできませんでした。伊東先生の小姓だから、と言うわけではなく、伊東先生の考え方に同調したからです。考えが異なれば、私は伊東先生について行く事はなかったと思います。

 衛士になってから、私は伊東先生と同じ部屋で寝食をにしていました。新選組時代は、高梨凛と言う女の子と寝食を共にしていました。彼女とはあまり話した事は有りません。私は、大半の時間を伊東先生と共に過ごしていましたし、彼女は斎藤さんと篠原さんと共に過ごしている事が多かったようです。

「お凜ちゃんも伊東先生の考えに賛同して衛士に入ったの?」
「あ……私は、篠原さんが好きだったから、ついてきたの」
「そうなんだ。頑張ってね」

 お凜ちゃんは、篠原さんが好きだからついてきた、と言っていました。邪魔になるかもしれない、と思った事も有ります。伊東先生の考えに賛同しているかは分かりませんでした。本当は、頑張ってなんて言いたくありませんでした。でも、お凜ちゃんがあまりにも綺麗な表情を見せる物ですから、ついつい言ってしまったのです。
 私は、お凜ちゃんの元を後にして伊東先生の元へと向かいました。この頃、京で不穏な動きがあるとの話を聞き、監視していたときの話をしに行ったのです。

「では、失礼します」

 平和な日々が続いていました。そう、あの日まで私たちは平和だったのです。
 
 御陵衛士が新選組局長の近藤勇を暗殺するという話が出たのです。でも、伊東先生はそんな事は全く考えていませんでした。伊東先生は、近藤さんの恐ろしさを知っている数少ない人の一人でした。人を殺した、と言う話もあまり聞いた事はありません。

 でも、新選組にその噂が伝わってしまいました。

「伊東先生……」
「大丈夫ですよ。私はそんな事なんて考えていません」

 都、と優しく私の名前を呼んでくれます。伊東先生の手が私の顔に触れました。慈愛を含んだ目で見つめてくる彼から、私は離れる事ができませんでした。
 伊東先生の唇が私の物に触れました。

「都、愛していますよ」

 慶応3年11月18日――

 近藤さんに呼び出されて伊東先生は近藤さんの妾宅へと行きました。接待をされるようでした。私は、特に何もすることなくいつも通りの日を過ごしていました。
「油小路が辻で伊東先生とおぼしき人が・・・!」

 私は、伊東先生が何かに巻き込まれたかもしれない、と思いました。皆さんそう思ったのでしょう。私たちは一斉に屯所から出て行きます。篠原さんが罠ではないか、と言っていましたが、聞く耳を持つ人などいませんでした。彼の言葉よりも、伊東先生のことが不安で不安で仕方がなかったのです。
 私たちは走りました。息が切れても、走りました。

「伊東先生!」
「くそっ! 新選組か!」

 どうした事でしょう。わずか9人に対して、新選組は30人近くの兵を準備していました。私は、新選組から逃げるために走り続けました。伊東先生を籠に乗せているところを横目に見ながら逃げ続けました。



一年後……。

伊東先生との子が生まれました。

父親がいないのが寂しい、と思う事があるかもしれません。

でも、伊東先生が残してくれた形見だから、何よりも大切にしようと思いました――。

リクエストについて

夢小説のリクエストは常時受け付けています。
お相手さん出来れば以下から選んでくれると嬉しいです←
新選組中心。
幕臣、薩長、公家、御陵衛士、蝦夷共和国等も書きますよ。

<書けます>
・近藤勇
・土方歳三
・伊東甲子太郎
・市村鉄之介
・篠原泰之進

<少し時間かかります>
・勝海舟
・中岡慎太郎
・芹沢鴨
・藤堂平助
・原田左之助
・沖田総司
・坂本龍馬
・榎本武揚
・大鳥圭介

<書けますが期待しないでください>
・岩倉具視
・松平かたもり
・新見錦
・桂小五郎

<練習中>
・西郷隆盛
・徳川慶喜
・永倉新八
・清河八郎

お題もつけてくれると助かります。
ただ、ネタが思いついても次の日カビ生えたり粘っている事が有ります
そんなときは少し遅くなりますよ。

リクエストはこめんかついりぷで!
申し訳ないですがフォロワーさん以外はお断り。

「行くんだね」 沖田総司夢

「沖田さんが労咳って本当ですか?」
「本当だったら君はどうするの?」
「看病します」

 私はそう言って沖田さんに微笑んだ。

 本当は、看病して良いのかがわからない。山崎さんが言うには、労咳は空気感染するらしい。空気感染するという事は、私にも写る可能性があると言う事。でも、私が見る沖田さんの症状と言ったら、咳をして、たまに血を吐いて、肺が痒いと言っているだけ。死病、と言われている病気には全く見えなかった。

「土方さん、槙さんどこに行ったかわかりますか?」
「槙? あぁ祥光ならさっき総司のところに行ったぞ」
「沖田さんのところに、ですか? 何度言ったらわかるんでしょうか……」
 
 土方さんと山崎さんが話しているのを、私は遠目に聞いていた。山崎さんは、医学が有るけれど、私は彼の言う事をどうしても聞けなかった。沖田さんが心配で仕方がない一心で私は看病している。誰にも迷惑はかけていない、と思う。


次の日――

 私は、伏見に行けとの命令を受けた。でも、沖田さんは病気で療養しろとのこと。きっと沖田さんは私がいなくなったらまた無茶をするんだろうと思う。私は、沖田さんの元へと向かった。
 案の定、沖田さんはどうして私を伏見に連れて行ってくれないんだと言っていた。

「でも、沖田さん……。労咳でしょう?」
「祥光ちゃんは行くんでしょ?」
「私は、医療班としてついて行くんです」

 そっか、と言うと沖田さんは私の手を握った。戦っていた時よりも腕の力が弱くなっていた。こんなに見た目は元気なのに、沖田さんの体はすでに病気に冒されているんだ。よく見れば筋肉も少し落ちているような気がする。

「行かないでよ」
「そう言うわけにはいかないです。私だって新選組の一員ですから……」

 沖田さんと離れたくない……。どうして、私は新選組に入ってしまったのだろう。新選組に入らなければ、私は沖田さんに出会う事もなかったし、離れる事が悲しいとも思わなかった。

 離れる事が運命であっても、ずっとこのままでいたかった。

「祥光ちゃん……」
「行ってらっしゃい」

 沖田さんだって、私が行かなきゃらならないことぐらいはわかっている。だから、私は沖田さんの手に触れた。
沖田さんが私を抱きしめる。

「こんなこと言ったら駄目だって分かってる。でも、私は、祥光ちゃんと一緒にいたい」
「私も沖田さんと一緒にいたいです……」


二人の唇が一つに重なった。


リクエストなのですよ。

「この世界が終わるまで」 沖田総司夢

新選組の頓所で、私はいつも通り洗濯物を干していた。元々身長が低い私は、背伸びしないと洗濯物一つ干す事ができない。

私は、新選組の隊士ではなく、ただの小間使い。洗濯とか掃除とか食事の準備とか。今だって訓練の声とか慌ただしく走る足音とか聞きながら洗濯物を干している。

ようやく後一枚で干し終わる……。

そんなとき、私の後ろから声が聞こえてきて、私は洗濯物を落としてしまった。被害が一枚だったから良かった物の、それは洗うのが一番大変だった物で、私はげんなりしながらもう一度洗うために持ち運んでいったのだった。
 でも、聞こえてきた話に、私は耳を疑ってしまう。近藤先生達が話していたのは、長州藩が御所を襲う計画を立てているという事。長州は、八月十八日の政変で京から追いだしたはずなのに……。それに長州は尊皇派なのにどうして天皇がいる御所を?

「あぁ! もう訳がわからない!」
「千歳ちゃん? いきなり叫んでどうしたの?」
「沖田さん……近藤さん達が話してたのって……」
「どうやら本当みたいだよ。私もさっき聞いたばかりなんだけど……」

そして、運命の日

元治元年7月19日

 長州藩勢力が、京都市中にて市街戦を繰り広げ始めた。戦う事の出来ない私は、火事が起きたところから避難する市民の誘導に走った。どんどん広がっていく火に、人々は右往左往としている。
 火から離れたところに行ったとしても、家に忘れ物をしたからと戻ろうとする人々。何人が自宅に戻って亡くなったのだろう。私は、ある程度落ち着くと燃え広がる火を食い止めるための消火活動へと走っていった。
 桶に入れた水をどんどん撒いていく。

「うちの家財道具が……ばあちゃんの形見なんです!」
「おばあさんの形見と貴方の命では、貴方の命の方が大切でしょう!」

 私は、戻ろうとする女性を必死に止めた。女性にとっては肉親の形見の為大切な物なのだろう。それは私にも十分理解できた。でも、貴方が死んだら悲しむ人が大勢いる、と何度も言い聞かせた。近くにいた人に避難所へ誘導するように伝える。

「まだ全然……じゃない……」

 どれだけ水を準備しても火は燃え広がっていく。

 しかも、21日朝にかけて「どんどん焼け」と呼ばれる大火に見舞われ、広い範囲の街区や社寺が焼失し、私たちは消火活動と避難誘導をやめる事ができなかった。新選組も、いくつかの組に分かれて行っていたのだ。
 私は、沖田さん率いる一番組と藤堂さん率いる8番組の手伝いに行った。

「千歳ちゃんまで手伝わなくても良いのに」
「戦う事はできなくても消火活動や避難誘導は出来ますよ」
「でも、体真っ赤だよ?」

 おそらく低温やけどをしたのだろう。体のありとあらゆるところが真っ赤になっていた。

「頓所に戻って体を冷やした方が良いよ。私も一緒に行くから、ね?」

 沖田さんが私を連れて頓所に戻ってくれる。


 頓所の自室につくと私はため息をこぼした。避難誘導した人の中には私の両親もいた。家は燃えてしまったのだろう。言葉にならなかった。沖田さんはそんな私の心情に気がついてか、そっと頭をなでてくれた。


 気がつけば、貴方に恋をしていました――。


 混乱の時に気がつくなんて、なんて不謹慎なのでしょうか……。

「父の敵」 沖田総司夢

大それた事を言っているわけでは決してない。きっと私の目標は、かなう事がないから――。


「やー!」

 私は、隊士達と共に、剣術の訓練をしていた。今日の師範は一番組組長の沖田さん。女の私が、剣術の訓練をする必要なんて、本当は全くないと思う。でも、幹部の人たちに参加しろと言われて参加していた。

「終わり!」

 やっと終わった、と思った。訓練と言ってもそんなに甘いものではなく、毎回誰かしら倒れていたり、打ちのめされたりしていた。私は水を飲みながら自室へと戻っていく。
 撃剣師範の人はみんな厳しい。沖田さんも斎藤さんも吉村さんも……本当に厳しかった。女の私にはついて行けない事もあった。それに、私は元々体を動かすのがあまり好きではない。新選組に入った理由だって、暇だったから。
 それに、利用できそうだったから……。

 そう、あの日までは――

 あの日私は、永倉さんと一緒に団子屋に行っていた。甘い物が好きだった私は、うきうきな気分で永倉さんの後をついて行く。この辺りには、不逞浪士が出るという噂もなく、私たちはたわいもない話をしていた。

「この前来たときこの団子、なかったんだよねー。良かったー」

 私は、以前来たときに売り切れていた一番気に入っている団子を食べ始める。団子を食べるだけで幸せになれる私も私だと思う。でも、私はそれだけ単純なのだろう。ゆっくり歩いて、永倉さんと離れている事にも全く気がついていなかった。

 元々、京都の人間ではない私は、壬生の頓所に戻るまででさえ、いつも通る道ではないと帰れなくなる。道に迷ってしまった私は適当な小道を抜けて元々の道へと戻ろうとした。

「えっと……」

 団子を片手に辺りを見回しながら歩いて行く。

「うわ!」
「きゃっ!」
 だから、前から人が来ている事も全く気がついていなかった。叫ぼうにも誰も来てくれそうにない小道。私は、一か八か抜刀した。少しは剣の腕にも自信が出て来たので、勝てる、と思ってしまったが、それが間違いだった。瞬間、振ってきた刀を押さえるのがやっとで、反撃が全く出来なかったのだ。どれだけ刀を押しても相手の刀は全く動かず、自分の体ばかりが滑っていく。

 相手が、振りかざした刀を構えたとき、私の体は少し滑りそうになる。そこを押しとどまって私も構えた。今度は私から攻撃した。でも、いとも簡単にあいては押さえてしまう。

 太刀筋が、読まれている……。

 そんなとき、聞き覚えがある声が聞こえて私は思わず振り返ろうとする。

「大の男が少年に対して何やってるの?」
「起きt……」
「私が新選組とばれてしまったら大変だよ」
 
 沖田さんだった。私の目の前に立つ大男は、こいつがぶつかってきて謝らないからだ、と何度も説明する。沖田さんは何も言わず剣を抜くと男と向き合った。

「それでも、少年に大の大人が本気になって剣を抜く必要はどこにもない」

 そこからは速かった。さすが、沖田さんと言える早さで、大男は倒れた。
「沖田さん、ありがとうございます」
「どう致しまして。一つ気になるんだけどまみちゃんはどうしてここにいたの?」
「永倉さんと一緒に団子を買いに来たんですけど迷ってしまって……。沖田さんこそ巡察中ではないのですか?」
「私は良いんだよ。じゃ、屯所に戻ろうか」

 沖田さんが有無を言わさず私の手を取って歩き始めてしまうため、私は沖田さんの後ろをついて行った。
 
 二つ先の角を右に曲がったら頓所へ向かう道に出た。そこからは目をつぶっても歩けるぐらいの距離だったけれど、いつ何があるかわからない。私たちは警戒しながら歩いて行った。

 頓所について、私は沖田さんの部屋へまっすぐ行った。

「何ではぐれたの?」
「すいません……。私がゆっくり歩いてしまっていたので……。それにあの団子屋さんにはいつも誰かと一緒に行くので道がわからなくて……」
「私はまみちゃんが心配なんだよ? わかってる?」
「はい……」

 自然とこぼれてくる涙を沖田さんは優しく拭ってくれる。

 私はきっと、沖田さんが好きなんだ……。触れたところが熱くなった。


「明日からも稽古つけるからね」

「はい!」

沖田さんがあまりにも優しすぎて、貴方を殺して父の敵を取ろうなんて、思えなくなってしまったのです……。


リクエストなのですよー

「水揚げはあなたで」 岩倉具視夢

 私が初めてあの方を見たのは、しとしとと振り続ける雨の時でした。今思えばあのような方がどうしてお座敷に来ていたのかはわかりかねます。ただ、徳が高く私以上に上品だったことは覚えております。

 ただ、その立ち居振る舞いがあまりにも上品で、目が離せなかったのです……。

「どうして、岩倉様がこちらに?」
「理由がなければ来てはならぬのか。そうお堅いことを言うでない」

 そう言って私を見つめる岩倉様から私は目を逸らすことなどできませんでした。まさか目の前にいる方が、公明天皇を失脚させ、王政復古のクーデターを起こした人などとは思えなかったのです。

「岩倉様……」
「様なぞつけなくてもよいではないか」
「では、なんとお呼びすればよろしいでしょうか」

 あの時は、あなたのような方のお相手をするのは初めてで、貴方を見つめることが精いっぱいでした。

 私は水揚げの日が近づいていました。お相手に……と名乗り上げる旦那様は多くいました。

 ある時、姐様が私を呼び出しました。
「あなたの水揚げの相手が決まりましたよ。心待ちにしていたでしょう?」
 そういって姐様が言った名前は、あの時お会いした岩倉様で、姐様たちはあんなすばらしい方が初めてなんてうらやましいと口々に言うのでした。
 一番驚いたのは私自身です。初めてが岩倉様なんて運がいいにも程があると何度も思ったのです。

 二人きりになるとなにを話していいのか全く分かりませんでした。岩倉様は震える私の手を握って言葉を紡ぎます。
「比べ越し 振り分け髪も 肩を過ぎ…」

 これは有名な伊勢物語。

「続きを」

「君ならずして 誰が揚ぐべき……」

 岩倉様は狡いです。私の顔はきっと真っ赤だったと思います。
 だって、意味は……あなたの手で、私を女にしてください……。


 そっと押し倒す岩倉様にすべてを託して、私は快楽の海へと溺れて行ったのでした。

「君のことを想わずにはいられない、絶対に」 沖田総司夢


最近、私は体調が悪い気がする。ふと気がつけば咳が止まらなくなっていた私は、近所にある医者の元へと向かおうかと何度か思ったが、周りに心配されるのも嫌だったので、風邪を引いた、と言う事にしてその場は収めておく事にした。

「総司」
「近藤先生……どうしたんですか?」
「総司が体調が悪そうだと未来ちゃんから聞いて来たんだ」
「私の体調が悪そうだと未来が言ってたんですか?」

私は内心、未来に自分の病状が知られるのが一番怖かったのかもしれない。

そして元治元年6月――

私は、近藤局長らと共に池田屋へと向かった。長州藩が池田屋か四国屋のどちらかで会合を開くという事は突き止められていた。だが、本命は四国屋だと土方先生が言うため、私たちの隊は10名だった。

「会津中将殿お預かり新選組、ご用改めでござる!」

亥の刻頃だろうか。近藤先生が叫んだ。私は、近藤先生の後に続いて池田屋へと入っていく。近藤先生と私以外には、永倉先生と平助が中に突入した。志士たちは、現場からの脱出を謀っていたが、外にも隊士が控えているため、私は屋内で奮戦していた。
「はぁはぁ……」

息が苦しかった。下から平助の叫び声と共に、何者かが打ち付けられる音が聞こえた。
私は、咳が止まらなくなった。咳をしてもしても止まらない。肺を取り外したいほどに痒い。

そのうちに私の咳は収まった。

「総司と平助がやられた、か……」

私は、気がつけば屯所の自室にいた。漏れ聞こえてくる声で、平助が大けがを負った事を知った。
そして、私の手についていた血の話もしていた――。

土方さんが、山崎君に傷の血の色と吐いたときの色の血の違いを聞いていて、私は焦った。山崎君が言うには、吐いたときの血は鮮やかで、傷からの出血の血は、赤黒いらしい。

――手についていた血は、鮮やかな色だった……。


何度、喉が切れた血だと思えば気が済むのだろう。でも、喉が切れた血はもっと出血が少ないはず。私は、医者に行った方が良いかもしれない、と思った。

「総司、入るぞ」

土方さんの声だった。

「お前の来ていた隊服の血の色を見た。ずいぶん鮮やかな色をしているな。血を吐いたのか?」
「何の話ですか、土方さん」
「しらばっくれるんじゃねぇよ」
「山崎が言っていた。吐いたときの血は鮮やかな色なんだってよ。医者のところに行け。良い蘭方医がいる」

私は、思わず土方さんから目をそらした。だが、土方さんがそれを許さなかった。私は、未来には言わないでください、と一言告げた。

おそらく、私が労咳なのは確実だ……。

「沖田さん、失礼します」
「未来、どうしたの?」
「沖田さんが気がついたと聞いて、来たんです。昨日はお疲れ様でした。本命は池田屋だったんでしょう?」

未来がそういうと、私はそうだよ、と言った。今は心配してきてくれる彼女も、先ほど来てくれた土方さんも、今後来るかもしれない隊士達も、みんなが鬱陶しい。

「少し……一人にしてくれないかな」
「……わかりました……」

 そうして、未来は私の部屋を後にした。未来に気がつかれていないか、不安で仕方がなかった。私はこんなに女々しかっただろうか? 彼女に迷惑がかかると思うと、伝える事ができない。

――次の日

私は一日休みを取って、土方さんが言っていた蘭方医を訪れた。
そこで告げられたのはやはり労咳で、私はあの死病でしたか、と軽く笑って蘭方医の元を後にした。


正直、絶望的だった。医者には療養しろと言われた。いつかは刀も振るえなくなるかもしれない、と言われた。
でも、私は新選組、近藤先生に尽くすと決めていた。だから、刀を持てなくなるという事は私自身が死ぬという事。

「失礼します」
「未来ちゃん……どうしてここに来たの?」
「心配だったので……」

心配なんてしなくて良いのに、と言ってしまった。きっと未来だって私の病気を知ったら離れてしまう。

「沖田さん……」
「私の事は心配しなくても大丈夫だよ。未来ちゃんこそ風邪が移っちゃうよ」

私は、未来に労咳という事を伝えなかった。

「私に移る事を心配してくれるんですね。ありがとうございます」

今日も、彼女に労咳だと伝えられなかった。


「未来ちゃん、こっちに」
「沖田さん?」
「何もしないから、大丈夫だよ」

ただただ、未来、君が好きなだけ。だから、少し抱きしめさせて欲しい。
そう、私の気が済むまで。


だって、君のことを想わずにはいられない。


君が私の病気を知るそのときまで、君はここにいて。


リクエストですよ。
遅くなってすいませんなのですよ。

「変えられない結末」 土方歳三夢

どうしてだか、私は、新選組に保護される事となった。理由は知らないし、全くわからない。

私は、元々近藤先生の小姓として新選組に在籍していたのだけれど、彼が新政府に引き渡されたとき、土方先生の小姓となった。土方先生の小姓には元々市村鉄之助、と言う少年がいた。私は彼と共に、土方さんについて行った。

京で新選組に保護され、江戸へ行き、会津へ行き、仙台へ行き……。このままどこまで北上していくのだろうか、と私は不安で仕方がなかった。その頃鉄之助くんは15歳で、私よりも恐怖が強かっただろうけれど、懸命に生きていて何度助けられただろう。

私たちは、蝦夷地に新天地を求めて行く事になった。その頃はすでに、新選組と言ってもほとんど壊滅状態だった。初期から加入していて残っている人は、島田さんぐらいだっただろうか。

――もう、新選組は残っていないんだ……。

「あの、柊さん? 少し、お疲れのようですよ?」
「鉄之助くん……ごめんね。なんだか新選組がもうないような気がして、切なくなってきたの」

鉄之助くんは、笑って、まだ土方先生がいますよ、と言ってくれた。土方先生は、最高の軍師だとは思う。私だって、それはわかっている。土方先生が命を落とす事なんて考えられない。

私は、鉄之助君のところを後にし、大鳥さんの部屋へと向かった。
大鳥さんの部屋へ入ると、そこには土方さんもいて、二人の仲が悪いというのは、嘘ではないのか、と思ってしまった。

「大鳥さん。お疲れ様です。土方さんも。お二人ともなかなか寝ていないの、知っているんですよ? 鉄之助くんも心配してました」
そういって私は微笑んだ。蝦夷へ向かったけれど、そこに新天地なんてなかったんだ。だけど、大鳥さんや土方さん、榎本さん達は必死に蝦夷を自分たちの物にしようとしている。その姿を、見ているのが本当に好きだった。
私は、お二人の顔をしっかりと見ると、部屋を後にした。

「鉄之助くん!」
「あの、土方さんにこれを渡すように頼まれたんですけど……」
「私は今行ってきたし、鉄之助君も顔を出してきたら?」
 そういって、私は彼の背中をそっと押してあげると、部屋に戻った。
 部屋にある私物なんかは数限られていて、こっそり守り続けてきた誠の旗や、ぼろぼろになっていたけれど、近藤先生が着ていた、新選組の羽織とかがいくつか置いてあるだけだった。私は、誠の旗をそっとなでた。少し感傷に浸っていると控えめにノックがなった。

 私が声をかけてドアを開けると、そこには最近あまり話す事がなかった島田魁さんがいて、私は驚きながらも椅子を出した。
「島田さん、お疲れ様です」
「お疲れ様。いやしかし、これからどうなるんだろうな……」
「今、榎本総裁達が話しています。土方さんもまた戦いの現場に行くんでしょうね……。私や鉄之助くんもまだまだ休まるときがなさそうです」
 島田さんは大口を開けて笑っていた。それにつられて私も笑う。束の間の休息が、今は嬉しかった。


 その日の夜、私は土方さんに呼ばれて彼の私室へと向かった。陸軍奉行並の私室となれば、落ち着いた雰囲気が漂う広い部屋だった。呼ばれた理由は何となく気がついたけれど、何も言わずに土方さんにお茶を差し出す。
「ああ、ありがとうな」
「こちらこそです。土方さん、少しは休んでくださいね」
 私はそういうと土方さんに微笑みかけた。土方さんが、私を横抱きにして寝具へと連れて行く。
「柊……」
「土方さん……」

 その日私たちは男女の関係になった。
 土方さんは私を愛していると言ってくれて、言葉の綾だったのかもしれないけれど本当に嬉しかった。


 貴方がいたから、やがて訪れるかもしれない悲しい結末にも耐える事ができたのです――。



リクエストですよ。

ごめんなさい遅くなりまして……。

「見た目じゃない愛」 篠原泰之進夢

 ただ単純に、美しい、と思った。
 あなたが私を助けてくれた瞬間から、私の人生は変わったのでした・・・。


 私は、男として新選組の隊士になった一人だった。私が就いたのは観察方で、山崎さんや篠原さん、島田さんらと行動をともにすることが多かった。
 その日は非番で、私は斎藤さんと篠原さんと共にぜんざいを食べに行っていた。二人は、私が女だと明確に知っている数少ない隊士で、こうして時々甘いものを食べに誘ってくれるのだった。
「おい、あれ、新選組の斎藤じゃねえか?」
「隣は篠原と・・・あの女みてぇなのは高梨、だったか?」
「気が付いてねぇな、行くぞ」

 私たちはぜんざい屋の外でそんな話がされているなどつゆ知らず会話をしていた。話していたのは主に私と篠原さんだったけれど。
 抜刀した浪士たちが私たちの元に駆けてくる。すぐに気が付いた斎藤さんが抜刀し篠原さんもそれに続いた。
 私が刀を抜こうとしたその瞬間、私は胸元を切られた。とっさに下がったため服だけだったが、さらしまで切られてしまったため、私の胸は外に出ていて、恥ずかしさと女だとばれてしまったことの二つで、私はその場から動けなくなってしまった。

 しばらくして、片が付いたとき、二人は私の方を見てくれた。
「篠原さん……斎藤さんも……ありがとうございます……」
 私は二人を見つめようとしたけれど、恥ずかしさの方が勝り無理だった。
「服を切られた、のか?」
「あ、はい……。少し気が付くのが遅かったもので」
「頓所につれていって着替えさせてやれ、篠原」
「あぁ」
 私は、篠原さんにおぶられて屯所へと向かった。彼のぬくもりに揺れて数分、屯所に着いた私はそのまま直ぐに自室に連れて行かれた。
「外で待っているから着替えておいで」
 篠原さんはそういって私にほほえみかけてくれる。彼が戸を閉めると、私は急に寂しくなった。
 彼が、私だけに微笑みかけてくれる、訳ではないのはわかってる。だけど、独占したい、と思ってしまった。この優しさは、私だけが知っている、と優越感に浸ってしまった。

 幾分の間かそうしていて、私は自分の胸元がはだけている事を思い出し、綺麗な羽織袴を取り出し着替え始めた。

「お待たせしてすいません」
「少し、中に入っても良いかな?」

 私は、どうぞ、と言って彼を中に通した。篠原さんが私の隣に座る。

「今日は少し気が抜けていたみたいだね。大丈夫かい?」
「あ、はい。突然だったので焦ってしまって……。先ほどの浪士達に私が女だとばれていなければ良いのですが……」
「その件なんだけど、君はどうして新選組に入ったのかな?」
「私は、男として育てられたんです。剣術の道場にも入りました。そして、ふらふらしていたところを、新選組の話を聞いて入隊したんです」
 篠原さんが、私の頭をそっとなでた。貴方のその行動一つで私は、女に戻りたい、と思ってしまう。彼が話し始めた。
「伊東先生が、離隊しようとしている話は知っているだろう? それに私もついて行くんだが、君はどうする?」
「私は、行こうと思っています。篠原さんと斎藤さんが離隊したら、ここには居場所がなくなってしまいますから……」

 そう、私に居場所を与えてくれたのは、斎藤さんと篠原さんの二人。一緒に仕事する人はたくさんいたけど、二人がいなかったら私は孤立していたかもしれない。甘い物が苦手だと言いながらもぜんざい屋に連れて行ってくれる。
 そして何よりも、私の話し相手になってくれる。他の人たちはみんな、妻子や妾がいるから、私の相手までしてくれない。
「君から近づいてみようとは思わないのかい?」

 私は、篠原さんの言葉に顔を上げてしまった。
「でも、皆さん妻子や妾がいるので……」
「平隊士だっているだろう? みんなが君に話しかけないのはいつも君の隣には私や斎藤君がいるからだとは思わないのかい?」
「篠原さん! どうして急にそんなこと……」

 私は、篠原さんに何を言いたかったのだろう。顔を見ると頭も口も動かなくなるんだ。
 君には難しかったかな、と笑って篠原さんが私を抱きしめる。どうして急に? 私を抱きしめる理由は何ですか……。

 貴方の行動がいつも私を壊していくのです――。


 篠原さんの腕の中に、どれほどいたのだろう。私は、潔く解放された。顔が真っ赤だ、と笑う彼に私はさらに照れてしまった。
「明日は私も斎藤君も仕事だけど、君も仕事は入ってたよね?」
「はい。えっと、団子屋付近の張り込みだったかと思います」
「頑張って」

 そういうと彼は私の部屋をそっと後にした。体が、熱い……。

 篠原さんに触れられたすべての部分が熱を持っていて。この気持ちは一体何なんだろう……。


 次の日――。

 前日の篠原さんの行動がまだ理解できないまま私は、団子屋付近へと向かった。土方さんの話によれば、この付近に最近不逞浪士が現れるらしい。私は、不逞浪士も甘い物が好きなのだろうかなどと考えてしまった。
 怪しまれないように団子を食べながら辺りを見回す。しばらく団子屋で時間を潰し、私は観光客の顔になった。持っているのは小刀のみ。

 私は、道を聞きながら不逞浪士がどれかを探っていく。

「だから、やはり近藤を……」
「いや、頭脳派の土方や伊東からの方が……」

 私は、そっと後をつける。足跡は立てない。気配はなるべく薄く、そう呼吸音でさえも小さくして空気感を消していく。右手には小刀の柄。
 今だ、と思った瞬間、私は一人の男に飛びかかった。私のその姿を見た一番隊が駆けつけて来た。
「すまない、助けて貰って」
「不逞浪士を斬るのが新選組の仕事。手伝って貰ったと言われても困りますよ」
 そういって、沖田さんが私を見た。一番隊の隊士が、不逞浪士達を屯所へ運ぶ算段をしていた。私は、観光客、と言う仮面を取り、新選組観察方の高梨凜へと戻った。
 私は、屯所への道を急いだ。なぜだか疲労が貯まってしまっていた。

 部屋には当然、誰もいない。そこまで広い部屋ではないけれど、なぜだかとても広く感じる。昨日篠原さんと話していたからかな。
 私は、香を焚いた。そこまで好きではなかったけれど、篠原さんの匂いに感じた。

 暫くして、控えめに戸をたたく音が聞こえた。声をかけると「入るよ」という篠原さんの声が聞こえた。

「篠原さん……」
「伊東先生が離隊の準備を始めてるよ。御陵衛士を拝命したんだ」
「御陵衛士……?」
「孝明天皇の墓を守る役目だよ」

 孝明天皇の、墓を……。私たちは、佐幕派と勤王倒幕派として袂を分かつからしょうがないのかもしれないけれど、話を聞いたとたんに辛くなった。私は、篠原さんの手を握った。
「どうしたんだい?」
「何でもないですよ」
 貴方の手が、狂おしい程に愛おしい。


 そして、慶応3年3月10日――

 私たちは、新選組の屯所を後にした。もう、私たちは、新選組には戻れないんだ。
 衛士となってから、私たちは、政の話をしたり薩摩長州藩の動向を探ったりを開始した。
 新選組が襲ってこないように、刀を抱いて寝たりもした。そのときの手の上が右が良いか左が良いかを真剣に話し合ったときには、笑ってしまった。私たちはどうしてここまで新選組を恐れていたのだろう。
 その後、何人かの新選組隊士が御陵衛士に入隊したい、と脱走をしてきたが、私たちは追い返し続けた。挙げ句の果てに武田さんまで来たけれど、決して入隊はさせないと追い返した。




 運命の、慶応3年11月18日――

 伊東先生は、近藤先生に呼ばれ妾宅にて接待を受けていた。何が行われるか全く知らなかった私は、その日も篠原さんと二人でのんびりと話していた。
 突然、足音が聞こえてきて、屯所に響いた一声に私たちは驚いた。
「伊東先生が何者かに殺された模様です! 死体は油小路が辻!」
 私たちは刀を持って無我夢中に伊東先生の死体の元へと走っていった。そこには、新選組隊士が40人近くいて、焦っていた私は無我夢中に篠原さんを追いかけて走っていった。走っていたときすでに藤堂さんは戦死していて。どうして、藤堂さんが、って思いながらも走り続けた。


 だから、遠く離れて追っ手もなく逃げ延びる事ができるなんて思っていなかった。私のように中途加入や、篠原さんのように伊東先生が入ってからの加入なんて、藤堂さんですら殺されるのだから、殺されて当然だ、とどこかであきらめていた。

「生き、てる……」
「うん。私も君も生きてる。だから大丈夫だよ」
「篠原さん……。私、篠原さんが死んでないか心配だったんです……」
「高梨……いつも言ってるじゃないか、自分の心配をしろって」
「でも、私は篠原さんがいなくなったら生きていく理由なんてないです……」
 私たちは体を温めるようにどちらともなく抱きしめあった。そうして、篠原さんから優しい口づけが落とされる。ゆっくりと唇を離すと彼は口を開いた。
「っ……」
「お凜、私は君を……」
「どう、したんです……か?」
「いや、何でもないよ。とりあえず薩摩藩邸に向かおうか。大丈夫、私は、絶対に君を見捨てはしないから」
「はい!」

 そういうと私は、貴方の手を握って走り出した。


 油小路での伊東先生暗殺の後、私は大切な人にたくさんの愛を貰ったのだった。



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ごめんなさい。
初更新はもっと人気のある人にしようと思ったのですが……。

何を血迷ったのか篠原さんです。

マイナーすぎですごめんなさい。

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